母の強さ

 昨日は夫が大阪に出張だったので、久々に一人で寝たのだが、「寂しさ」を感じた。これまでも、夫がたまに出張でいない時はあったが、そんなに気にも留めず、寂しいと思ったことはなかったが、昨日は「寂しい」という気持ちがずしんと私の心の中に居座っていた。いずれ、夫婦のどちらかが先にいなくなることは自然なことで、予行演習ともいえるかもしれない。ふと、そんなことを思ったのと、もう一つ、私は母のことを思っていた。

 母は昨年9月に父をみおくった。父がいのちを引き取る時も、葬儀の時も、母はマイペースでとても冷静で、涙など見せることなく、淡々としていた。ドラマなどみていると、夫を亡くした妻が取り乱してとか、さめざめと泣くというイメージだが、母はそういうそぶりを見せたことはなかった。
そういう中、葬儀の終わり、喪主の挨拶の中で母が言った言葉は今でも忘れることなく、しっかりと私たち姉妹の中に残っている。母はこんな言葉を言っていた。「主人は本当にいい人でした。」「主人が亡くなって涙を流しておりましたが、葬儀前にもう涙を流すのはおしまいにしました。」いつも天然ボケで、娘としては「大丈夫か?!」と思うことばかりの母。まさか、こんな、はっきりとした意思を語るとは思わず、三姉妹驚きの瞬間だったが、母のこの言葉で、いろいろあったことがすべて昇華されるようであった。
 それにしても母が泣いているところなど、見たことがなかった。鈍感な自分が気づかなかっただけ?いや、母は人知れず、娘に心配かけないようにしていたのだ。
そんな母は、妹家族の引っ越しを手伝いに行くなど、相変わらずのマイペース。前を向き、自分を貫き、めそめそしていない姿に母のしなやかな強さを感じた。私もこういう人間でありたい!と思った。