いすみ鉄道・鳥塚社長は<鉄道ファンの地域活性> 愛があって面白い!

いすみ鉄道・鳥塚社長は<鉄道ファンの地域活性> 愛があって面白い!

いすみ鉄道・鳥塚社長は<鉄道ファンの地域活性> 愛があって面白い!

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いすみ鉄道・鳥塚社長は<鉄道ファンの地域活性>。愛があって面白い!1月12日の夜、娘の通う中学校で「ボランティア研修会」という集まりがあった。地域の小中学校には地域コーディネーターがいて、様々なボランティア支援活動の報告があった。小学校では、読み聞かせや新一年生の登下校見守り、夏休みの蔵書点検、植物の水やり、また授業支援として、高学年ではミシン実習、中学年では書道教室など、さらにユニークなものとして学校宿泊体験まであった。中学校では、学習会の実施や職場体験、うどん作りやヒマワリの種まき体験、カヌー体験など、さらに充実した活動報告がされていた。

地域に住む子どもたちは次代の担い手となる大切な存在、子どもたちの健やかな成長を地域で支え、育んでいく取り組みに少しでも参画していきたいと感じた。

と、前ふりはここまでとして・・・

この研修会の特別講演として「いすみ鉄道」の鳥塚氏の講演があった。鳥塚氏は、地元板二小、板一中出身。3年前に公募でいすみ鉄道の社長になり、経営再建を進めているとのことだった。

いすみ鉄道は千葉県の外房海岸沿い、過疎地域を走るローカル鉄道。かつて外房海岸は海水浴でにぎわっていたが今はほとんど行かない地域で、人口も減少し続けている。

鳥塚さんは、48歳の時、外資系の航空会社で運行部長の職を辞していすみ鉄道の社長に公募で就任。以来、地方創生、これまでとは違うやり方でローカル鉄道の問題に取り組んでいるとのこと。

もともと「ローカル線は私たち日常生活の足」として売ってきたが、今は皆、車世代に変わっている。にもかかわらず、地域には「ローカル線は私たち日常生活の足」がイデオロギーのようになっている人が多いという。

地元の人は駅を残そうと必死で、人が来ない駅を文句も言わず、一生懸命に清掃を続けている。ある時、掃除をする地域の人に「なぜ掃除を続けるのか」聞いてみたら、「駅は町の顔、いつ人が来てもいいように玄関をきれいにしておかなきゃ」という。人が来ないにもかかわらず、そうやって30年近くも黙々と掃除をしている地域の人とじかにふれながら、「地域の人たちが浮かばれないようなら、日本はどうしようもないじゃないか」と強く感じ、<地域の人を喜ばせようじゃないか!>と考えるようになったという。

地域の人たちはお客さんが来てほしいと願っている。田舎にどうやって人を集めるか・・・「お金なし・人なし」での勝負。その企画が面白い! なんと、いすみ鉄道にある、黄色い車両に<ムーミン>のシールを貼っただけで、<観光列車>と言ったら、なんとテレビ局が来たという。さらに、女性誌「OZ」も<ムーミン列車>の取材に。

都会の人は田舎のローカル線へのあこがれがある。つまり、<非日常>をいかに演出し、伝えるか。都会からの集客をつかむ、中でも女性の心をどうつかむかがポイントだという。女性は行動が早い。男性が「いつかは行きたい・・・」なんて言ってる間に本当にやってきた!そうして、地域の人はボランティアで「ここがムーミン谷ですよ」とか言いながら、駅と周辺の休耕田を案内する。どちらも喜んだ!しかし、ここで一つ問題が・・・。女性たちは列車に乗ってきたのではなく、車でやってきたのだ!

それでも、「それじゃダメじゃん」としないところが鳥塚社長のすごさだろう。よく見てみるとムーミン列車見たさにきた女性のそばには、運転手でお呼びがかかった、つまらなそうにしている男性の姿が。そこで筋金入りの鉄道オタク・鳥塚社長が鉄道ファンの心をくすぐる企画を投入。鉄道オタクなら飛びつく昭和40年製「キハ」車両を一両導入したところ、撮り鉄がこぞってやってきて、SNSで写真アップ!広告費もいらず、どんどん広がって、ある時、昭和41年製のオート三輪を持ってきた人が「キハ」と並んで写真を撮らせてほしいといってきたという。普通なら「だめですよ」と断るところを、鳥塚社長はそれも「面白い!」といって、車庫で写真をとってあげたら、それもSNSですぐに広がり、さらに翌週、昭和39年製のボンネットバスがやってきた!といった具合に、見事に観光地になった。ボンネットバスと言えば「猫バス!」。トトロの世界を味わえるとあって、ボンネットバスに子どもたちを乗せてあげると、子どもたちが喜んでブラスバンドでお礼の演奏。すると、親たち、地域の大人が子どもたちの演奏に喜んだ!ここでも問題が・・・。まだ、だれも列車には乗っていない! 

鳥塚社長は「鉄道には乗らなくていいですよ!」という。まさに、地域にある凝り固まったイデオロギーを逆手にとった発想で「昭和時代の再現」をして地域の需要を起こしている。そうやって人を集めるための地域の広報戦略に成功して、さて<どのように鉄道に乗ってもらうのか>という、鉄道会社としての本題についても、逆転の発想で取り組んでいる。結婚式やお座敷列車、食堂レストラン・・今でこそあちこちで展開する高級志向の列車の旅の先がけ、新たなビジネススタイルを生み出したのもいすみ鉄道だというから面白い!・・・と、こんな具合に講演ではさらに多くの面白いエピソードが語られ、次々にお金をかけずに企画力で都会からの集客を続けているということだった。

とどまることなく、何時間でも聞ける面白い話。鳥塚社長は、「いすみ鉄道という木になった実を、今度は地域の人が食べる番、守ってきてよかった!と思ってもらえるようにこれからも楽しく地域を元気にしていきたい」と熱く語っていた。鳥塚社長の言葉の奥に、鉄道への愛と、何より見えない所で汗を流し続けてきた地域の人を喜ばせたいという温かい思いやりを感じた。

鳥塚さんはある写真を見せてくれた。自分が小学生の頃、いすみ鉄道のディーゼル車の前で撮った写真。いい思い出が自分の中に残っていて、それがいすみ鉄道、ローカル鉄道への愛情となり、今の自分を動かす力になっているという。

人は成長していく中で、良き思い出を積み重ね、人としての温かさや受け入れる器を育てていくのだろう。良き出会いが人を作る。自分の住む地域の中で子どもとの良き出会いを作りながら、未来の世代へ人としての温かさや優しさ、人と助け合って生かしあって生きる、良きものを伝えていきたいと思ういい講演だった。