第1回 憲法は「王様をしばる法」?

K.cafe 憲法カフェ 王様をしばる法

【Kさんからの質問】教えて!種田先生!!

緊急事態宣言の真っ只中ですごしたゴールデンウイーク。ゴールデンウィークには、5月3日の憲法記念日も含まれますが、安倍首相は、世の中がこのような状況にあっても、憲法改正をすると意気込んでいるとの報道が流れていました。私には、なぜ憲法改正をしなければならないのかよくわかりませんが、そもそも憲法とはなんでしょうか、先生にぜひ教えていただきたいです。

【種田弁護士からの回答】

種田弁護士

私はこれまで、明日の自由を守る若手弁護士の会(通称:あすわか)の一員として、各地で開催される「憲法カフェ」で、紙芝居を使って、憲法とは「王様をしばる法」だと説明してきました(もし紙芝居を見たことがないという方は、以下のYouTubeで見ることができますので、是非ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=zWvD1rjusF8)。

この紙芝居を見ると、憲法とは何かがよくわかります。皆さんの中には、憲法も法律の一つだと思っている人もいるかもしれませんが、憲法は、法律とは全く違うものです。法律は、例えば他人の物を盗ったら窃盗罪で逮捕されるように、私たち国民をしばるものです。一方憲法は、私たち国民をしばるものではありません。憲法は、王様(権力を持つ者)をしばるものです。今は王様の権力が3つに分かれていることが多いので、その3つの権力(3つの権力を持つ者)をしばっています。具体的には、中学校で「三権分立」という言葉を習ったと思いますが、立法(国会)、行政(内閣)、司法(裁判所)の3つの役所が暴走しないように、国民のために働くように、憲法でルールを決めてその3つの役所をしばっています。

なぜ、憲法で権力をしばる必要があるのか。それは、権力をしばらずにそのまま放置しておくと、歴史が証明するとおり、権力は濫用され(好き勝手に使われて)、私たちの生活はめちゃくちゃになってしまうからです。その最たる例が、戦争です。日本は、太平洋戦争の戦禍を踏まえ、今の憲法を作りました。

また、憲法には、私たちの自由と権利が書かれています。例えば、21条(表現の自由)は、国民の発言や行動を国が邪魔してはいけないと定めていますし、27条(労働基本権)は、国民が人間らしく働けるように国は法律などを整備しなければならないと規定しています。憲法には、私たちの自由や権利が書かれていますが、それは、「国家権力からの自由」や「国家権力との関係での権利」を意味しています。国家権力が一番強大で、時に国民の権利を侵害したので、憲法はその権力をしばり、私たちの自由や権利を守っているのです。

憲法は、「王様をしばる法」です。王様が持っている権力をしばり、権力の暴走を防ぎ、私たちの自由や権利、ひいては暮らしを守っているのです。だから、憲法は、私たちの暮らしに大切なものです。ただ、日々、憲法の大切さを感じながら暮らしている人は少ないと思います。大切なものを失ってからその大切さに気づくようでは、後悔します。そこで私たちは、今のうちから、憲法をよく学ばなければならないのです。

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Illustrations by 佐藤右志

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次回掲載は、9月28日の予定です。