第3回 え? 私たちって主権者なの?

K.cafe バーチャル憲法カフェ 憲法第1章 1~8条
K.cafe|K.cafe店長 たまろ

こんにちは!K.cafe 店長たまろです。
今月のバーチャル憲法カフェは、いよいよ憲法第1章について。みんなも一緒に考えながら読んでみてね。

華ちゃん
華ちゃん

憲法の第1章「天皇」について、解説をお願いします。

種田先生
種田先生

憲法の第1章は「天皇」について、1~8条にわたって条文が書かれています。

第1条
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

この条文は、天皇が「象徴」という立場にあること、そして国民に「主権」があることを宣言しています。ここで重要なことは、憲法条文の1条目に「国民主権」が宣言されているということです。

憲法の前文と合わせ、憲法の条文は歴史を踏まえて憲法ができた経緯と内容の大切さに基づいて順に書かれています。
戦前の日本にも、大日本国帝国憲法という「憲法」という名の付いたルールはありました。ただ、今の日本国憲法と違って、戦前の憲法では、国民は「臣民」で、天皇が「統治権を総攬する」と書かれていました。臣民とは家来のことで、総攬するとは統合して一手に掌握することをいうので、天皇はまさに王様で、国民は天皇の家臣でした。戦前の日本は、天皇が王様、天皇主権の独裁国家だったのです。そして、この「天皇主権」の下で、国民の権利が侵害され、ひいては戦争になり、国民があまりにも悲惨な犠牲を払うことになりました。そのような歴史を踏まえ、二度と戦争を起こさないという決意のもと、今の憲法はつくられました。「天皇主権」から「国民主権」へ、まさに下克上ですね。私たち国民がこの国のかじ取りをすることになったのです。このことが1条に書かれています。さらに2条から8条の条文には、また昔に戻らないように、「元」主権者である「天皇」に対する様々な制限が記されているのです。

華ちゃん
華ちゃん

この宣言は、当時の人にはどんなふうに受け止められたのでしょう?

種田先生
種田先生

この宣言に対し、二重の衝撃があったといいます。一つは戦前の日本で絶対的な存在だった「天皇」が「象徴」になったことの衝撃。もう一つは、戦争を止められなかった「天皇主権」から、民主主義国家として「国民主権」を宣言されたことで、「自分たちが主権を持った」ことへの衝撃があったと聞きました。

華ちゃん
華ちゃん

「天皇陛下」が神から人間になったということと、自分たちが主権を持つということへの衝撃ですね?

とんこさん
とんこさん

子どもの頃、母の実家に帰った時に、親戚の家に天皇陛下の写真が大きな額縁に飾ってあったり、壁一面に貼ってあったりしたのを見ました。天皇陛下が結婚した時のもの、皇太子殿下が生まれた時の写真もありましたね。それが衝撃だったんです。「自分たちには身近ではない人たちの写真がなぜあるのだろう?」とすごく不思議で大人に聞くと、「そんなこと聞くもんじゃない」って言われちゃう。それで「これは聞いちゃいけないことなんだなあ」と子ども心に感じたのです。今、30歳になる長男が小さい頃、やはり親戚の家に何度か連れて行った時も同じように衝撃だったようです。ある程度大きくなってから、写真のことを聞いてみたら、天皇陛下だということはわかったが、「なぜ「象徴」を奉るのだろう」と疑問に思ったそうです。「象徴」って、どんな意味なんだろうって考えますよね。

種田先生
種田先生

私たち戦後の教育を受けてきた世代は、王様としての「天皇」ではなく、最初から「象徴」としての「天皇」しか知らないわけで、「奉られている」存在ということへの違和感があります。私たちにとっての天皇は軍服を着て政治の表舞台に立っている姿ではなくて、正月や国体での挨拶だとか、災害地を訪問する姿なのです。でも、「象徴」が何なのか、正直なところ、よくわかりませんね。「象徴」という意味も皆、人それぞれに捉え方が違うと思うのですよ。

Tamao
Tamao

たしかに「象徴」ってなんだろうと思いますよね。それともう一つ、憲法では私たち国民が「主権者」と言われていますが、実際のところ自覚があるわけでもないのです。

種田先生
種田先生

現代は、一条をほとんどの人たちが、「え、私たちは主権者なの?」と思うのではないでしょうか? これこそが、私たち国民がこの国を本当に「自分たちの意思で動かしているのか」ということだと思います。本来なら、一条を読んだ時、この国の舵取りをしているのは国民なのだから、がんばってこの国のことを考えていかなければいけないし、そうしないとまた戦争になってしまうという危機感を持たなければならないのです。人任せにしていたら、かつてのように「だれか」が決めて、また国民がひどい目に遇うかもしれないということをしっかり踏まえて、主権者としての自覚をもち、平和を守るためにがんばらないといけないのではないでしょうか。

とんこさん
とんこさん

自分たちが国を動かしているなんて自覚はなかったけれど、人任せにする積み重ねがやがては戦争につながってしまう可能性があるのだとしたら、主権者としてアクションしないといけないですね。

種田先生
種田先生

そうそう。「私たち、全然政治に関係していないんです」では主権がなかった戦前となんら変わらないのです。憲法を作った人の決意は省みられることなく、さらにだれか知らない人の考えで行われる「政府の行為」に目を向けることなく放置すれば、再び戦争になってしまう未来もないとは言い切れません。だからこそ、そうならないよう、みんなで考えていかないといけないのではないかと思います。

わからない間に主権者の権利がもぎとられてる!?

Illustrations by 佐藤右志


K.cafe|K.cafe店長 たまろ

危機感を持って主権者としてアクションするって、例えばどんなことがあるかな。
今回の感想や憲法第1章 1~8条についてわからないことなどがあれば、ぜひこの記事の下のコメント欄から教えてね!

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次回掲載は、11月28日の予定です。

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