バーチャル憲法カフェ第4回目は、いよいよ「九条」について考えます。日本国憲法を語る上で避けて通れないのが「九条」。日本が世界に誇る、平和主義が書かれた九条について、2回にわたって解説していただきます。
あらためて九条の内容を教えてください。
九条の条文は二項あります。
1
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。
一項では「戦争放棄」、二項では「戦力不保持」「交戦権の否認」が定められています。憲法は王さま(国・政治家)を縛るものですから、九条全体として「政府による戦争禁止」を謳っていて、九条二項によって徹底的な平和主義が貫かれています。
「政府による戦争禁止」が謳われる前は、政府が戦争してもよいとされる時代がありました。侵略戦争で領土を広げていく時流から、戦争禁止の流れに変わっていったきっかけは1910年代の第一次世界大戦です。ヨーロッパがひどい状態になり、1920年代に軍縮や戦争禁止の議論が進み、1928年に最初に戦争を禁止する条約としてパリ不戦条約が締結されます。その後も国際条約は複数できましたが、国際条約は国内の法律と違い、違反したかをジャッジする裁判所もなく,違反しても制裁もありませんでした人々の意識は非戦へと向かっていましたが,国際条約では,結局,戦争を止めることができず,第2次世界大戦が引き起こされてしまったのです。そしてヨーロッパは再び荒れ野原となり、さらにアメリカも本格的に参戦し原爆も使われたことで、ようやくもう戦争は止めようという声が多数あがり、1945年に国際連合と国際連合憲章ができたのです。
国連憲章にはどんなことが書いてあるのですか?
国連憲章二条四項には、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と謳われています。
2つの世界大戦を経て侵略戦争を禁止する世界の流れとなり、「侵略戦争をしないよ」という国連憲章の条文で、日本国憲法の九条一項も国連憲章とほぼ同じような内容を踏襲しています。日本国憲法九条一項は、当時の「トレンド」を取り入れた条文なのです。
九条一項が、当時の「トレンド」だったんですか?へえ!!
世界のトレンドが自分の国の憲法に入っているって、なんだか誇らしいですよね。世界的に称賛される「九条ブランド」いいでしょ、って自慢したくなる(笑)
そう、当時の流行りですね。戦後当時、戦争はよくないという時代の雰囲気と国際連合への期待から「同様のものをわが国でも」という世論はありました。日本は敗戦国として戦争の当事者であり、誰よりも戦争の惨禍を知る国民が作った憲法の中に、流行りの条文を入れない理由はなかったわけです。ただ九条の真の価値というのは、世界的トレンドだった一項ではなく、二項が入っているところにあるのです。
九条の真の価値ってどういうことですか?
一項で「侵略戦争を放棄」し、さらに二項で「侵略戦争、自衛戦争も含め、手段である軍隊を持たず、戦う権利すらも認めないという、戦力不保持、かつ交戦権の放棄」までしたところが九条の真骨頂なのです。戦争放棄でそもそも戦争はできないけれど、「軍隊を持たない」とダメ押しをして、さらに「戦う権利もない」とダメ押しをしている。これが徹底した平和主義と言われる所以で「すげー、まじで!ここまで書くのか!」という驚くべき内容が二項に書かれているのです。
それって、そこまで驚くような内容なんですか?
太平洋戦争の前からずっと戦ってきた日本は非常に野心的な国で、経済面でも戦争が合法とされていました。戦争はむしろ領土を広げるための手段としては当然だったのです。あたりまえのように他国と戦争をやる国が、九条二項のような条文を作るというのは衝撃的ですよ。小国が武装放棄することはできるかもしれないけれど、これほどの国家が武装放棄したという衝撃が九条の二項にはある。さらに将来的には世界中の国が外交努力で平和が維持できるという目標を、実際に条文に書いていることが衝撃なのです。条文である以上、条文の通りにしていなければ、憲法違反を問われますからね。
うーん。なるほど。「九条二項」で、日本が再び戦争できないように歯止めをかけているってことなんですね。
日本には世界に誇れる「九条」があるから、日本は戦後70年間、「平和」を保ってこられたと思ってきました。でも条文の中身をよく知らずに「平和主義が貫かれている」ということだけで鵜呑みにしていただけだと気づきました。すごいことが書いてあるんですね。
70年前の当時は、当時のトレンドの更に先を行く,世界に先駆けた画期的な条文だったですが、世界情勢の変化と日本を取り巻く環境の変化から、九条二項で歯止めをかけていることが条文解釈によって骨抜きにされているのが今の状況なのです。
え、九条が骨抜きにされているのですか?
そうです。九条はあるけど、自衛隊があって海外派兵されるようになって、限定的とはえ,集団的自衛権も行使できるようになっている現状がある。九条があるだけで安心しているのが今の状況です。平和を先取りする画期的な九条を憲法に有していることに胡坐をかいて、矛盾する状況を議論せず放置してきたことは非常に問題です。 九条の現代的問題点については、次回に解説しましょう。
国民が九条のすごさを、中身をよく知らずに自慢している間に、9条を取り巻く状況はんどん変わっていて、国民は気づいたらいつの間にか置いてきぼりにされているのですね。九条があるってだけで、思考停止しちゃっているのを感じました。
昔,最先端のブランドをいち早く手に入れた後、そのブランド力に安心しきって、古くなったのにまだ流行の先端だと思い込んでるという状況なのですね。
九条がどのような役割を果たしているのか、何が問題なのか、しっかりと学びたいです。
「九条があるってだけで、思考停止しちゃっている」という華ちゃんの言葉にドキッとしちゃったよ!
みんなはどう感じたかな?
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次回掲載は、12月28日の予定です。