第5回 「75年前の最先端は、今やオールドファッション」 ~ それでも、最先端って言っちゃう? 2/2~

K.cafe バーチャル憲法カフェ 憲法 9条
K.cafe|K.cafe店長 たまろ

バーチャル憲法カフェ第5回目、更新が遅くなってごめんなさい!
前回から引き続、日本国憲法を語る上で避けて通れない「九条」について考えます。日本が世界に誇る、平和主義が書かれた九条についての2回目。
とても熱く語っていただいていつもよりも長く読み応えあります!

華ちゃん
華ちゃん

九条に問題点はありますか?

種田先生
種田先生

九条二項は、

前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
と定めています。
冒頭の「前項」とは、侵略戦争を否定する九条一項のことです。
そのため、「前項の目的を達するため」とは、「侵略戦争をしないという目的を達成するため」と解釈できます。裏返して言えば、「侵略戦争ではなく、自衛のための戦争やその手段なら、九条二項の下でも許される」という解釈ができてしまい、それが自衛隊の創設の少し前からの日本政府の公式解釈になっています。
九条二項は、軍隊を持たない(戦力不保持)、国際法で認められた戦争をする上での権利も放棄し(交戦権否認)、徹底的な平和主義を定め、戦争の手段(軍隊)や権利(交戦権)すらも王様(権力者、国家権力)から奪い、二度と王様が戦争を起こせないように歯止めをかけています。しかし、王様は九条一項が自衛権までを禁止していないことに目をつけ、「前項の目的を達するため」という文言にからめて、九条二項を不当に解釈して、自衛権を行使することは九条の下でも許されるとして、世界有数の軍隊である自衛隊を作りました。
さらに、自衛のための戦争には「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の二つがあると言われていますが、最近では、自衛隊は、個別的自衛権だけにとどまらず、更に進んで、九条の下でも、集団的自衛権の行使もできると言って、法律を整備しています。
このように九条は、その文言の揚げ足をとられて、王様の都合の良いように解釈されているのが現実です。

とんこさん
とんこさん

憲法の条文の読み方ひとつで、全然違う解釈ができるんですね?

種田先生
種田先生

第二次世界大戦後の世界において、日本は、米ソ対立の前線にありました。
戦争に負けた国だからこそ、九条二項のような画期的な試みもできたけれど、冷戦の真っ只中で、さらにはアメリカの意向もあり、日本の再軍備が進められました。
当時、日本はGHQの占領下にあり、主導権を握るアメリカの意思には逆らえない状況だったと思います。
しかし再軍備するのなら、本当は国民で議論して、九条を改正しないといけなかった。
それなのに、いつの間にか都合の良い解釈で再軍備を進めていきました。
このあたりは、正面から再軍備の憲法改正をすると国民の反発が予想されたので、GHQや当時の日本政府は、“解釈”という手段をとったのかもしれません。

華ちゃん
華ちゃん

再軍備を拒否することが難しかったということですか?

種田先生
種田先生

「GHQ」という神がいて、拒否する選択肢はなかったということですね。

華ちゃん
華ちゃん

うーむ。天皇がGHQに変わったみたいなものだなあと感じますね。

種田先生
種田先生

たしかに。「天の声」がある状態での飾りの国民主権という感じでしょうね。

華ちゃん
華ちゃん

日本政府は「我々がやるんだ」と言わされながらやったみたいな感じですよね。

とんこさん
とんこさん

すごい傀儡の形ですね。

種田先生
種田先生

GHQの影響でと言われるけれど、実際にはGHQが主権者だったわけです。

華ちゃん
華ちゃん

天皇主権からGHQ主権に変わっただけで、国民に主権はなかったんですね…。

種田先生
種田先生

アメリカの意向で再軍備が決まり、日本政府もそれを受け入れざるを得なかった。
そして、憲法を変えるアクションもできたけれど、GHQも日本政府も世論を見て、今は憲法を変えられないと判断し、解釈変更で進める選択をしたということでしょうね。

とんこさん
とんこさん

国にとって大切な再軍備を解釈変更で対応するなど、アメリカではありえないことでしょうが、日本人は受け入れているんですね。

種田先生
種田先生

再軍備を受け入れたところから、少しずつ矛盾する事態を解釈で拡大してきて、今の状態まで来た。安保法の成立前に行った政府解釈によってよく言われるのが、日本は普通の国になってしまったということです。
憲法九条一項しかない国と同じになってしまった。
九条二項がある意味がほぼないということです。

華ちゃん
華ちゃん

どうして「ほぼ」なんですか?

種田先生
種田先生

自衛隊の行動や装備は、「必要最低限」にしなければならないという政府解釈は変わっていません。
集団的自衛権の行使も、フルスペックの集団的自衛権が行使できるとは言っていなくて、必要最小限だけで、武器弾薬以外の後方支援とか、限られた範囲しか認めていませんので、現状では、最前線でアメリカより前に出て戦うこともできません。
九条二項があるがゆえに歯止めがかかっているのです。
そもそも「軍隊は持っちゃいけない、交戦権はない」と書いてあるので、集団的自衛権の行使を認めると言っても、さすがに二項に引っ張られて、「必要最小限」でという条件が取れないわけです。でも「必要最小限」と言っても、私たち国民が「必要最小限」かを判断するのは難しいので、これまでのように政治家がフルスペックの集団的自衛権の行使も「必要最小限」だと言って、二項があっても、フルスペックの集団的自衛権の行使ができると言い出すかもしれません。
今は後方支援だけできるよと言っていても、世論を見ながら「おお、もう少しいけそうだな」と思われたら、まずは武器の輸送などをし始めて、さらに「もっといけそうだぞ」となったら、自衛隊とアメリカ軍が一緒に最前線で戦っているかもしれません。

華ちゃん
華ちゃん

安保法ができて5年経っちゃいましたもんね。あの時さんざん言っていたけれど、今はもう何にも言わなくなってしまいました。

種田先生
種田先生

自衛隊の問題点は「見えない」ところです。
憲法が解釈で変えられて自衛隊が存在するけれど、本当は現実の方が先に進んでいて、あとから解釈をつけているだけになっている。
安保法ができる前から、集団的自衛権の行使を前提としてアメリカと軍時訓練などが行われるなど、先行して現実には憲法違反の行為がされているのです。

とんこさん
とんこさん

知らないうちにどんどん進んでしまっているんですね。

種田先生
種田先生

そうです。
九条二項で、戦争の手段をなくすというのは画期的だったけれど、自衛戦争の名の下に抜け道ができ、解釈で歯止めがきかなくなっている状態を今後どうするのか、国民で議論することが大事だと思うのです。
九条二項の「軍隊を持たない、交戦権を放棄する」という明確な定めが、解釈によって骨抜きになっている状態は、法治国家ではありえないと思います。
この状態は、憲法を守らなければいけない人たちである政治家が、それに向かって努力しているのかを“業績評価”をするとしたら、みな落第。
ただ評価する側の国民は評価する手段である選挙という手段を持っているにもかかわらず、憲法違反の状態に、国民自身が及第点を与えてしまっているのが今の状態です。
そもそも評価する国民の方が、自分が「評価者」であることに気づいておらず、さらに九条の中身も分からず、どう評価すればいいのかも分からないままでは、評価することも難しいです。

華ちゃん
華ちゃん

例えば自分が株主だったら、利益を出さない会社の経営陣を追求して責任を取って辞めてもらいます。商品が不良品だったら交換してもらったり、接客が不愛想だったら店長に文句言ったりしますよね。

とんこさん
とんこさん

政治家たちの今の仕事ぶりに対して、本来「王さまをしばる」私たち国民の方が監視の目を持てていないということなんですね。

種田先生
種田先生

今の憲法九条が不当な解釈を許しているという事実があるけれど、解釈があっているかどうかの前に、王様に勝手な解釈をさせないように九条の定め方を検討しなければなりません。
これまでの経緯もあり、今の状態では「軍隊」の存在を否定できないし、戦争が起こる可能性も否定できない。
もっと徹底してやりたいなら、しっかりとしばらなければならなかったというのが、結果的には、九条の反省点。
そもそも完璧になるかはさておき、少なくとも、今の九条は完璧じゃない。
今の九条が完璧なら抜け道がないはずですから、九条にも改善点があるということです。

華ちゃん
華ちゃん

九条は完璧で、改善点などないと思っていましたけど、もっと中身を学んで、それぞれが自分の頭で考えて、日本としてどうしたいのかを議論する必要があるということなんですね。子どもたちに、どんな国をバトンタッチしていきたいのか…

種田先生
種田先生

九条が最高到達点ではないということですね。

とんこさん
とんこさん

75年前にできたトップブランドの陰りを知らずに放置し続けたツケが回って、非戦を誓った九条の誇りすら砕かれて、日本が普通の国になってしまったなんて知らなかった。かなりショックですけど、そのままでいいとは思えないです。

種田先生
種田先生

今の九条より平和を守る手段はある。
「新九条論」といった議論も出てきているので、国民的議論をしていくチャンスにしていきたいですね。

華ちゃん
華ちゃん

新しい「九条平和ブランド」を立ち上げる時期に来ているのですね。今度こそ、日本の主権者として考えなければいけない大きな課題だと感じました。


K.cafe バーチャル憲法カフェ
K.cafe|K.cafe店長 たまろ

九条二項を不当に解釈されないように、ぼくたちもしっかりと学んで目を光らせなければならないんだね。
この記事を読んでわからないことや感想などあれば、ぜひこの記事の下のコメント欄から教えてね!

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次回掲載は、1月28日の予定です。

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